3種類の商品を販売する次のような会社があったとします。
売上高 | 45,000 |
売上原価 | 26,000 |
売上総利益 | 19,000 |
販売費及び一般管理費 | 28,000 |
営業利益 | △9,000 |
この会社は当然赤字です。
上記の損益計算書を見るとこの会社の営業利益はマイナス9,000の赤字であることがわかります。当然、赤字が続くといけないので経営改善が必要になります。
商品別損益計算書を見る
この会社では3種類の商品を販売していますので、まずはどの商品が赤字を出しているのかを分析します。
商品別損益計算書 | A商品 | B商品 | C商品 | 合計 |
売上高 | 10,000 | 20,000 | 15,000 | 45,000 |
売上原価 | 4,000 | 16,000 | 6,000 | 26,000 |
売上総利益 | 6,000 | 4,000 | 9,000 | 19,000 |
販売費及び一般管理費 | 9,000 | 8,000 | 11,000 | 28,000 |
営業利益 | △3,000 | △4,000 | △2,000 | △9,000 |
販売中止 |
この商品別損益計算書を見ると最も赤字を出しているのはB商品であることがわかります。そこでこのB商品の販売を中止したと仮定して利益計算するとどうなるか計算してみようと思います。
売上高 | 25,000 |
売上原価 | 15,000 |
売上総利益 | 10,000 |
販売費及び一般管理費 | 27,000 |
営業利益 | △17,000 |
なんと、B商品の販売を中止することで赤字が減少すると思っていたのに、赤字が△9,000から△17,000になり、8,000も赤字が増加してしまいました。
これは一体なぜでしょうか?
費用には固定費と変動費がある!
損益計算書の中の売上原価と販売費及び一般管理費に含まれる費用の中には、売上高の増減に関係なく発生する固定費と売上高に応じて費用が発生する変動費とがあります。この固定費と変動費の違いに気付かずに商品の取捨選択をすると先のような「赤字商品の販売を中止したら赤字が拡大してしまった」といった事態を招いてしまいます。では、なぜ固定費と変動費の違いがこのような差を生むのか具体例を挙げて説明していきます。
固定費と変動費について
例えば、お店を経営しているとして、お店の賃借料(家賃)は、売上の大小に関わらず発生しますので、これは固定費になります。売上高の増減に関わらず毎月決まって(固定して)発生する費用のことを固定費といいます。
これに対して、変動費とは、売上高の変動に応じて変化する費用のことを言います。例えば、原材料費がこれに該当します。たくさん商品が売れるとその分だけ商品を仕入れる必要がありますので、これは変動費になります。
わかりやすく説明すると、携帯電話料金を思い浮かべてください。基本使用料は、どれだけ通話するかに関わらずかかりますよね。つまり、基本使用料は固定費です。通話料は、通話時間に応じて毎月変動しますよね。つまり、通話料は変動費です。
固定費と変動費を区別した損益計算書
先の商品別損益計算書を固定費と変動費に区別すると次のようになります。
商品別損益計算書 | A商品 | B商品 | C商品 | 合計 |
売上高 | 10,000 | 20,000 | 15,000 | 45,000 |
変動費 | 6,000 | 12,000 | 16,000 | 34,000 |
①限界利益 | 4,000 | 8,000 | △1,000 | 11,000 |
固定費 | 7,000 | 12,000 | 1,000 | 20,000 |
②営業利益 | △3,000 | △4,000 | △2,000 | △9,000 |
上記の損益計算書は、先の商品別損益計算書を固定費とと変動費に区別しただけで内容は全く同じものです。売上高、費用(固定費変動費の合計額)、営業利益のいずれも同じ金額のはずです。この表をみると限界利益と営業利益という2つの利益が表示されていることがわかります。先の損益計算書では営業利益がもっと悪いB商品の販売をやめれば赤字が解消すると考えていましたが、実際に販売を中止すると赤字が膨らんでしまいました。では、この固定費と変動費で表示した損益計算書でB商品の販売を中止した場合を計算してみます。
商品別損益計算書 | A商品 | B商品 | C商品 | 合計 |
売上高 | 10,000 | 0 | 15,000 | 25,000 |
変動費 | 6,000 | 0 | 16,000 | 22,000 |
①限界利益 | 4,000 | 0 | △1,000 | 3,000 |
固定費 | 7,000 | 12,000 | 1,000 | 20,000 |
②営業利益 | △3,000 | △12,000 | △2,000 | △17,000 |
B商品の販売を中止することで原材料等の仕入れがなくなるため変動費が0になりますが、固定費は売上高に関わらず発生するためB商品の損益計算書は△12,000になってしまいます。これが先の赤字商品の販売を中止したら赤字が拡大してしまった原因です。
ではどの商品を販売中止にすれば良いのか
もう気づいている人もいるかもしれませんが、商品の取捨選択をする場合には、①の限界利益で判断します。この事例でいうと限界利益が赤字になっているC商品の販売を中止することで赤字を削減できます。
商品別損益計算書 | A商品 | B商品 | C商品 | 合計 |
売上高 | 10,000 | 20,000 | 0 | 30,000 |
変動費 | 6,000 | 12,000 | 0 | 18,000 |
①限界利益 | 4,000 | 8,000 | 0 | 12,000 |
固定費 | 7,000 | 12,000 | 1,000 | 20,000 |
②営業利益 | △3,000 | △4,000 | △1,000 | △8,000 |
このようにC商品の販売を中止することによって赤字が△9,000から△8,000に減少します。
赤字でも限界利益がプラスなら良い!
限界利益がプラスであれば絶対に良いというわけではありませんが、限界利益がプラスということは固定費の一部を回収できているということなので、営業利益がマイナスであっても早期に販売中止などをするべきではありません。
ただし、固定費の中にも色々あって、商品の販売中止後すぐに削減できる固定費もあれば削減できない固定費もあります。例えば、固定費が専用の大型設備を購入していて、販売中止後も他社に売却できず、自社で遊休資産として保有しなければならないようである場合は限界利益がプラスであるならば固定費の一部を回収できているので販売を継続するべきですが、家賃や人件費などの他へ転用できるものが大半である場合は限界利益がプラスであっても営業利益がマイナスであれば販売中止した方が良いこともあります。
販売士はこのような知識も習得できる!
販売士は、わが国の流通業で唯一の公的資格として高く評価されており、企業の中には、採用の基準、昇進・昇格の条件にしているところや社員の自己啓発の一環として資格取得を奨励しているところもあります。販売士では、これまで何気なく考えていたこと、わかっていたことを正しく理解する為の知識を学べます。
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