近年、万引きにより閉店に追い込まれる店舗が増加しており、企業も万引き対策に力を入れています。ですが、本当に万引きでお店が倒産するのでしょうか?そんなに盗まれているのでしょうか?
100円の万引きは3,000円の売上と同じ
100円で仕入れた商品を150円で販売するとします。単純に考えると利益は50円です。となると、100円の万引き分を取り戻すのに300円分だけ販売すればよいことになります。しかし、実際には300円分販売したとしても万引き分(100円)の利益にはなりません。
理由は簡単。商品を販売するためには、商品の仕入に係る運賃やお店の水道光熱費、家賃など様々な費用が発生します。また、従業員にも給料や賞与を支払わなければなりません。これらの費用を差し引くと利益は非常に僅かな金額になってしまうのです。
具体的な例をいうと、スーパーの最終利益率(売上高当期純利益率)は1%台、優良企業であっても大体3%~5%であるといわれています。100円販売しても利益は数円ということです。ということは、仕入値100円の商品を万引きされるとしたら、その万引き分を取り戻そうと思えば優良企業であっても3,000円くらいの売上が必要になる計算になります。(100円÷3%=3,333円)
書店にとって万引きは死活問題
万引き問題はどの業界においても頭を痛いことではありますが、なかでも書店業界は特に問題になっています。何故かというと、書店業界の仕入方式は特殊で、仕入れた商品のうち売れ残ったものを返品できる消化仕入という仕入方式を採用しているところが多く、この仕入方式は返品ができるため売れ残りリスクがない反面、仕入値が高く、結果として利益率が低くなります。有名書店の売上高経常利益率(2006年度)でいうと、ジュンク堂は1.7%、紀伊国屋は0.4%です。つまり、1,000円の本が盗まれたらジュンク堂では58,823円、紀伊国屋では250,000円売らなければならないことになります。
万引き対策
このように万引きは企業にとっては存続をかけるくらいの大きな問題なのです。
2007年の万引き検挙件数10万人を超えました。これは検挙された人数であって実際に万引きを行っている人はもっと多いものと考えられます。
万引き対策として、各業界が取り組んでいるのは、防犯カメラの設置、店員を巡回させる、死角を作らない等がありますが、なかでも近年注目されているのが、ICタグです。ICタグはツタヤなどのCDショップでよく見かけるものですが、これが付いた商品をレジで精算せずに売場から離れると警報が鳴り、万引きを知らせてくれます。そんなに良いものであればなぜ全ての商品に付けないのかと思う人がいるかもしれませんが、これまでそのICタグ自体の値段の高さ(1個あたり100円超)がネックになっていました。しかし、近年この値段が下がり始めています。また、形状もシールタイプのものが開発されたりと書店業界のみならず、スーパーなどの他業界でも注目を集めています。
万引き検挙数推移
年度 | 認知件数 | 検挙件数 | 検挙率 |
---|---|---|---|
1998年 | 112,237 | 96,858 | 86.3 |
1999年 | 105,227 | 88,532 | 84.1 |
2000年 | 112,559 | 87,366 | 77.6 |
2001年 | 126,110 | 92,319 | 73.2 |
2002年 | 140,002 | 101,445 | 72.5 |
2003年 | 146,308 | 106,925 | 73.1 |
2004年 | 158,020 | 114,465 | 72.4 |
2005年 | 153,972 | 115,636 | 75.1 |
2006年 | 147,113 | 110,723 | 75.3 |
2007年 | 141,915 | 105,774 | 74.5 |
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