会社に銀行等からの借入金がなく、いわゆる無借金経営であれば倒産しないと思っている人がいますが、必ずしも借金がないからといって倒産しないわけではありません。借金がなくてもお金がなくて倒産することがあります。
倒産の原因は借金というわけではない
倒産と聞くと、「借金が沢山あったんだろうな」などと思ってしまいますが、必ずしも倒産の原因は借金というわけではありません。
そもそも借金をして倒産する会社は、基本的に通常の営業活動から借金返済の利益を稼いでいないからです。利息込みで毎月100万円の借金を返済しなければならないのに、毎月利益が90万円なら確実に倒産します。このように書くと「借金がなければ倒産しないのでは？」と思いませんか？しかし、借金がないからといって必ずしも倒産しないとは言い切れません。
どういうことか？
会社は毎月支払いに追われている！
会社を経営するということは、様々なところへ毎月支払いをしなければなりません。小売業であれば、①商品を仕入れて②販売する、これを繰り返して商売をしています。このように商売はほとんどの場合が先に商品を仕入れます。先に仕入れるので先に支払いが発生します。とはいえ、仕入先の業者も鬼ではないので、商品を仕入れたその時にお金をくれとは言いません。通常は掛販売をします（いわゆる飲み屋のツケみたいなもの）。商品を仕入れた小売業者は、消費者に商品を販売したお金からその掛を支払います。これが今日行われている一般的な商取引です。
支払いは仕入れた商品が売れた後にするのであれば、問題ないのでは？
たしかにその通りです。仕入れた商品の代金は「売れた」お金の中から支払うので問題ありません。問題は、仕入れた商品が売れなかった場合です。一部の取引を除き、通常の取引では、商品が売れなかったからといって仕入業者に返品できません。売れても売れなくても支払いはしなければなりません。
会社は毎日商品を仕入れているため、仕入代金は毎月支払わなければなりません。例えば、1月の売上がいくらになるか、利益がいくらになるかなんて、予想はできても正確な数字は誰にもわかりません。しかし、仕入は先にしているので、支払わなければいけない金額は確実にわかります。その金額を支払えなかったらどうなるか？倒産です（又は支払遅延で信用失墜）。
さらに、会社が支払わなければならないものは、まだまだあります。大きな金額のものでは、従業員人件費です。売れても売れなくても人件費は払わないといけません。年末には賞与を払わなければいけないかもしれません。この他にも、家賃やリース料、水道光熱費など支払わなければ業務に支障をきたすものは沢山あります。
このように会社は、毎月支払いに追われているのです。借金がないからといって倒産しないとはいえないのです。
ちょっと難しいところでは
無借金経営といわれている会社の貸借対照表を見るとたしかに借入金はありません。しかし、ほとんどの会社には、流動負債の部に買掛金や未払金、未払費用があります。これらはたしかに銀行から借りたお金ではありませんが、将来、支払わなければならないお金の金額には変わりありません。
また、貸借対照表に表示されているもの以外で支払義務が確定しているものとしてリースがあります。原則として所有権が移転するリース契約については、契約時に支払総額を貸借対照表の負債の部に計上しなければなりませんが、計上しない処理も一部認められています。リースは原則として中途解約ができませんので、契約した金額は毎月必ず支払わなければなりません。もし途中でやめたければ違約金が発生します。
このように会社は毎月支払いをしなければならないものがあるのです。もし支払が遅れたり支払えなくなったらどうなるかといえば、信用を失って最悪の場合は倒産します。
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